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KAH|熊本の住宅

Site
Kumamoto

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(c) Takeshi YAMAGISHI
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(c) yHa architects

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KAH|熊本の住宅

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Kumamoto

Data

2012

Photo

(c) Takeshi YAMAGISHI

Press

新建築住宅特集2013年3月号(新建築社)

 熊本市内中心部からほど近い住宅街の一画に建つ住宅である。湖や公園などには阿蘇山の伏流水が湧き出すなど、敷地周辺には清らかな湧泉が数多く点在している。敷地東側には道路に接して水路が流れており、台風時の水路からの浸水を防ぐために敷地はある程度塀や壁に囲われた領域となっていた。もともとこの敷地に建つ既存家屋は建築面積が大きく、内部は昼間でも薄暗い環境であった。建主の要望は、まず第一に同程度の面積を確保しつつ、光溢れる明るい居住空間にすることを望まれた。さらに、既存の煉瓦の外壁といった場所の記憶を継承しつつ、台風時に建築へ浸水しないよう、道路からはある程度の高さに敷地レベルを設定しつつ、敷地境界に建つ煉瓦塀と建築の一体的な整備と、かつての生活で愛着を持って使われてきた建具や家具・アンティークな照明の再利用が求められた。
 既存の煉瓦塀や既存家屋の煉瓦の外壁といった場所の記憶を継承しながら、敷地境界に建つ煉瓦塀と建築の一体的な整備新たな煉瓦による量塊を計画した。プランはほぼ正方形の平面に浴室・キッチン・駐車場などの閉じたコアが配され、大きなワンルームながらもコアによって緩やかにそれぞれの場所を分節している。さらに、南北にキャラクターの異なるテラスを挿入することで、南北それぞれの庭からの連続感を演出するとともに、大きな面積ながらも光溢れる明るい居住スペースとなった。また、四隅の高さをそれぞれ変えることで<天井の高い開放的なリビング空間>や<天井の低い落ち着いた和室>など特徴的な四つの場所が生まれ、その対角線上に棟を配置した切妻の形態の屋根とすることで周囲の建物の切妻屋根に呼応している。
 かように、棲まう人びとの煉瓦や建具・照明といった記憶や愛着といった一種の「ミリュー」(=社会的・文化的環境)を物質化し、どのように新旧が渾然一体となった新しい場所や風景を形成するのか、という点が主題であった。