laboratory research map 2021
研究室リサーチマップ 2021

2021_リサーチマップ_p1**

laboratory research map 2021
研究室リサーチマップ 2021

Data

2001-

2001年より継続的に建築デザインの実践に取り組んでいる。主に大きく4つの研究テーマがあり、一見関連が無さそうに見えるが、それぞれのテーマを「クロノ(Chrono-)」(ギリシャ語で「時間」を意味するクロノスに由来する接頭辞)という接頭辞を付けて整理すると、いずれも時間概念を拡張するものと言える。

■MF|マルチフレーミング研究〈クロノ-トポス〉multi-framing
クロノ-トポス(時空間): ロシアの哲学者ミハイル・バフチンの概念で「物語などにおける時間と空間の組み合わせ」。
「マルチフレーミング」という複数のフレーミングを重ね合わせた絵画的手法によって、一つの空間に複数の視点が織り込まれた空間の可能性をカルロ・スカルパの建築空間分析とともに研究している。複数のフレーミングによって観察者に視点を与える「絵画的手法」こそがカルロ・スカルパのデザインの根幹的手法の一つであり、同一の場所に存在する多くの視点を観察者が結びつけながら体感する空間、多視点が連続していく空間をスカルパはつくりだしている。一つの視点でコントロールされた近代建築によって捨象された「時間」をいかに建築空間に内包するか。複数のフレーミングを重ね合わせた絵画的手法を取り入れ、一つの空間に複数の視点が織り込まれた空間の可能性を考える。小津安二郎の映画・17世紀オランダ絵画・マンガなど視覚文化論的研究も併せて行っており、博士論文「フレーミングの並置および重層による建築空間の実践的研究」(2017年)にて考察したものを礎としている。
●博士論文「フレーミングの並置および重層による建築空間の実践的研究」(早稲田大学/2017年)
●大林財団研究助成「全周パノラマ画像を用いたシークエンス評価による建築空間分析手法の研究」(2018-19年)
●科研費・基盤研究C「ICT技術を用いたカルロ・スカルパの建築作品における『絵画的手法』に関する研究」(2020-22年)
●「multi-framing device 棚田観測所」(佐賀県鹿島市/2019年-)

■LA|ランドフォームアーキテクチャー研究〈クロノ-ラグ〉landform architecture
クロノ-ラグ(時差):大地の持つ地学的時間と建築的時間というタイムスケールの異なる時差を空間的にどのように埋めるのか。
ランドフォーム(地勢)とは地形の起伏・界面との位置関係など土地のありさまのことを指し、大きな風景のなかで建築がどうあるべきか、。二つの異なる世界を繋げるエレメントである階段やスロープによって、ランドスケープと建築が連続したかたちとなるような地勢的建築のありかたを探る。吉阪隆正の〈涸沢ヒュッテ〉(1963年)は北アルプスの標高2,309mに建つ赤い屋根と蛇籠に囲まれた建築であり、建築の輪郭が曖昧で地形と建築が連続した風景をつくりだしている。
●「五ケ山クロス ベース(五ケ山ダム湖畔観光拠点)」(福岡県那珂川市 公募プロポーザル最優秀賞/2019年竣工)
●「天神中央公園 ハレノガーデン」(福岡県福岡市 公募プロポーザル最優秀賞/2019年竣工)
●「里山カフェ 棚田屋」(福岡県東峰村 公募プロポーザル最優秀賞/2020年竣工)
●科研費・若手研究「3D計測による風環境調整要素と一体となった集落空間に関する研究」(2018-20年)

■AR|アダプティブリユース研究〈クロノ-カオス〉adaptive reuse
クロノ-カオス(混沌):レム・コールハースが「保存と開発が同時進行して乖離し、それらを共存させる理論が不在」である現在の状況を提示したもの。
文化財などの歴史的建造物を移築や用途変更して保存・活用を両立する手法であるアダプティブリユース建築の調査分析を行っている。オランダでは歴史的建築物の活用を国の政策とし、保存・開発の共存を積極的に行っており、保存修復ではなく歴史的価値を残しながらいかに活用するデザイン行うか、という日本ではまだ未発達な研究テーマである。レム・コールハースは、保存と開発が同時進行して乖離し、それらを埋める理論が不在である現在の状況を「クロノカオス」と2010年ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展で論じている。
●「富久千代酒造 酒蔵改修ギャラリー」(佐賀県鹿島市・登録有形文化財を改修/1921年→2014年竣工)
●「JR肥前浜駅交流拠点施設」(佐賀県鹿島市・歴史的建造物を改修+増築/1930年→2018年竣工)
●「九州大学松浜厚生施設RE活用プロジェクト」(福岡県福岡市・歴史的建造物を選択的移築+新築/1928年→2021年竣工)

■LI|ライトインフラストラクチャー研究〈クロノ-ヴァリエーション〉light infrastructure
クロノ-ヴァリエーション(変化):季節や時間に応じて変化する動的な建築・ポータブル建築。
ライフラインの届かない環境にある自然環境から他律的に構法・モジュールが決定される山岳建築のようなライトインフラストラクチャーとしての建築の在り方を調査分析している。日本の山小屋はもちろんのこと、スイス連邦工科大学チューリッヒ校Studio Monte Rosaの設計した〈Hutte Monte Rosa〉(2009年)などの先駆的事例調査を行っている。
●科研費・若手研究A「災害時シェルターのためのライトインフラストラクチャー研究」(2004-05年)
●「御嶽山ビジターセンター」(長野県王滝村・木曽町 公募プロポーザル最優秀賞/2022年竣工予定)